このテーマ【沖縄そばと本】では、私が出会った沖縄そばに関する本を紹介していきたいと思います。
これを読んでくれて、こんな情報もあるよ!とアドバイスをいただけたら、凄く嬉しいです。
マニアックな企画ですが、沖縄そばの世界を読者の皆さんと一緒に探訪できたら嬉しいです。お付き合いください。
【沖縄そばと本】、4回目は、平松洋子著、画:谷口ジロー、『ステーキを下町で』、文春文庫です。
平松洋子さんは、食に関するエッセイストでは最も有名な作家さんのひとりです。
さらに、挿絵を谷口ジローさんが寄せているのが最高。
私のような食べ歩きニストにとっては、バイブルのような『孤独のグルメ』の漫画家さんです。
『ステーキを下町で』は、初出が「オール讀物」で、2010年7月から2012年12月に掲載されていたものを、2013年に単行本化、現在は文庫本でも購入できます。
平松さんというと、軽いタッチの中にも、食べ物を取り巻く人や、文化、風土を丁寧に織り込んだ作品という印象があります。
食をテーマにしているけど、もちろんそれだけじゃない、ストーリーが感じられる豊かなエッセイ。
そして、やっぱり最大の魅力は、食に関する表現の素晴らしさ。
どの文章を読んでも、お腹が空いてくること間違いなしです。
そんな平松さんが、沖縄そばについても取り上げてるんです。
『ステーキを下町で』の中の、「てぃーあんだの味」で、沖縄の「すずらん食堂」、「COFFEE potohoto」、「べんり屋」、「うりずん」、そして沖縄そば屋の『御殿山』について書かれています。
台風の沖縄を訪れた平松さんが、那覇市の食堂や、栄町の市場を巡っていくのですが。
私が普段知っている那覇の町や、食堂が、平松さんの視点からどう表現されているのか、とても面白く読みました。
『御殿山』についても、とても丁寧に書かれていて、知らないことも多く興味深かった。
私たちうちなーんちゅ(沖縄人)にとっては、身近な沖縄そばも、全国的には、まだ食べたことがない方も大勢いるんだと思います。
こうして、エッセイを通じて沖縄そばを知ることも、すごく貴重な機会なんですよね。
詳細は、是非、文庫を買って読んでほしいのですが。
最後に、『御殿山』の沖縄そばが絶対に食べたくなる一文を引用させてください。
〈『ステーキを下町で』「てぃーあんだの味」より〉
「さらさらと吹き抜けてゆく風を肌に感じながら、だしがまとわりついた艶やかなすばをじっくり噛みしめて味わう。生きもののように、すば一本一本がちゅるんっと勢いよく跳ねる。丼を持ち上げ、熱い汁をふくんでごくりと飲むと、つーっと喉を滑り降り、胃の腑にしっくりとおさまる。」
沖縄そばについて表現された文章の中で、最高の一節かと。
参考に、当ブログの『御殿山』に関する過去記事は、こちら。
そういえば、私が訪問したのも、台風5号の最中でした。