ども、さんぺいです。
本当にいつも別れは突然やってきます。
古いものほどいつまでもあると私たちは思いがちですが。
でも、いつ、何の理由で失われてしまうのか、人も、お店もそれは同じ。
1965年創業の『三角食堂』。
実は今年の5月で閉店が決まっているそう。
長年沖縄に住んでいても、行ったことのない食堂はまだまだ沢山あるわけで。
初訪問がこのタイミングになってしまったのが悔やまれます。
『三角食堂』は、宜野湾市普天間にある食堂で、普天間のランドマーク的存在です。
普天間の繁華街の入口にあるので、入った事はなくても、見かけた事はあるという方は多いのでは。
1965年というと、沖縄が日本本土に復帰する以前。
まだ、沖縄でドルが使われていた時代です。
名前の通り、三角地点に店はあり、隣には大きな桜の木が。
年の数だけ年輪を刻んできた店内。
入ると一瞬でタイムスリップしてしまいます。
厨房から料理が提供される小窓は昔の食堂によくありますが。
実は『三角食堂』には厨房と、お客さんのスペースには出入口がなく。
給仕のために、わざわざ店員さんが外から出入りするという珍しいシステム。
お代は、小窓越しに行います。
席は、テーブル席と小上がりの席があり、テーブルも椅子も年代を感じさせます。
ありのままの良さがあって、思わず雰囲気に浸ってしまう。
『三角食堂』のメニューです。
味噌汁に、中味汁、肉汁、ソーキ汁。
沖縄の食堂らしく汁物が充実。
沖縄そばは、ノーマル(大そば、半そば)に、玉子そば、ソーキそばがあり。
オムライスや、カレーも。
皆、推しのメニューがありますよね。
沖縄そばは、肉そば、中味そばも。
今回、どうしても食べたかったのがメニュー中央にある玉子そば550円。
okinawasoba.hatenablog.com実は、沖縄そばの歴史に玉子が登場するのは意外に古く明治期に遡ります。
初期の沖縄そばで、比嘉さんという方が玉子のヒラヤーチーを載せ人気を博した事が分かっていて、『みよ家』が復刻の「ベーラーそば」を販売したりしています。
そのほか『いしぐふー』では当時を意識して、玉子そばをリバイバルし、今では『いしぐふー』のシンボルにもなっています。
しかし、今ではこうして玉子焼きを載せた沖縄そばは、ほとんど残っていないのが現状なんです。
1965年創業の『三角食堂』でこうした形で玉子そばが残っているとは。
『三角食堂』のオリジナルなのか、それとも1960年代にはこのような玉子そばがメジャーだったのか。
詳しい方がいたら聞いてみたい。
見た目もインパクトのある玉子そば。
一面玉子焼きが覆う、はじめての人はびっくりするだろう沖縄そばです。
玉子焼きは薄めで、クレープほどの厚さ。
塩、胡椒で味が付いていて、これは食欲を刺激します。
スープに浸しても食べても美味しいので、少しずつ食べ進めました。
スープは、白濁していて、豚中心。
うっすら鰹の出汁も感じます。
動物系主体ですが、濃厚といった感じではなく、むしろサラサラ。
味付けも控えめなのでガツンというよりも、スーッと飲めるタイプです。
どんなコンディションでも美味しく食べられる万能なスープ。
七味をかけても美味しかったです。
麺は、普天間製麺所の混合麺。
太めから細めまで違いがあり、麺は厚みがあってもっちりした印象でした。
550円ですが、麺量はしっかりあって食べ応え十分。
『三角食堂』の玉子そば。
食堂の飾らない沖縄そばで、最近の技巧を凝らした厚みのあるスープとはまたベクトルの違うサラッとしたスープ。
どんな時でも美味しく食べられて、お腹いっぱいになれる良さがある。
ここで幾人の人たちが、沖縄そばを啜ってきたのか。
それを考えるだけでも、一気に気持ちがトリップしていく。
街の歴史の一部だった食堂がなくなるのは、やっぱり寂しいな。