さんぺいの沖縄そば食べ歩き

沖縄生まれ、沖縄育ち。沖縄そばの食べ歩き日記です。

【沖縄そば問題⑧】なぜ10月17日が沖縄そばの日なのか?

f:id:sanpei808:20211017085543j:plain今日、10月17日は、「沖縄そば」の日。

スーパーの店頭には、沖縄そばの麺や具材が並び、また沖縄そば専門店では行列ができる、大晦日と並んで、沖縄そばが最も盛り上がる日です。




では、なぜ10月17日が「沖縄そば」の日なんでしょう?

語呂合わせでもないような・・・。



沖縄そばの起源は、琉球王府時代に遡るとも言われていますが、一般に沖縄そばが流通しはじめたのは明治期です。

記録に残っているものでは、1902年に『観海楼(かんかいろう)』というお店が、新聞に「支那そばや」開業の広告を載せたことが分かっています。
調理人は、清国人だったことから「唐人そば」の名で知られるようになりました。



f:id:sanpei808:20211001174224j:plain<最近、110年ぶりに復元された「唐人そば」(『下地そば』)。当時のそばは、こんな感じだったのでしょうか>




その後、「志那そば」は人気を博し、店舗も広がっていきます。
人気店の『ベェラーそば』や『ウシンマーそば』などが次々と開業。

1916年には、「志那そば」を「琉球そば」に変更するよう、那覇警察署長が指導したこともあったそうですが、定着しませんでした。

その後、沖縄県は、太平洋戦争で国内唯一の地上戦を体験し、大変な戦禍にみまわれます。
沖縄そばの名店を含め、多くの建物、文化が破壊されてしまいました。



沖縄県内で、「沖縄そば」の呼称が一般に定着したのは、戦後のようです。

私自身も、今でも年配の方から、街へ出かけた際に食堂で沖縄そばを食べるのが庶民の贅沢だったという話は良く聞きます。


1950年代中頃、製麺所から沖縄そばが売り出され、それまで自家製手打ち麺が中心だったところから、気軽に麺を購入できるようになり、家庭でも気軽に味わえる食べ物となり浸透していきます。



f:id:sanpei808:20211017091741j:plain<沖縄のスーパーならどこでも売っている製麺所の麺。様々な種類があります。>




ここで沖縄そば最大のピンチが訪れます。

1976年、公正取引委員会から、「蕎麦粉が30%以上入っていないと『そば』の名称は使えないと、沖縄そばの名称に指摘が入ったのです。

地域に親しまれている「沖縄そば」の呼称を、どうにか残したいと沖縄生麺協同組合が中心となり、何度も折衝を重ねた結果。

1978年10月17日に「生めん類の表示に関する公正競争規約及び公正競争規約施行規則」別表での名産、特産、本場、名物等の表示で、公正取引委員会から「本場沖縄そば」の商標登録が正式に承認されました。

承認のためには、沖縄そばの歴史の検証や、特性の分析、製造データの積み上げなど、大変な苦労があったとのこと。

この日を記念して、沖縄生麺協同組合では1997年に、10月17日を「沖縄そばの日」とし、これが一般に広く浸透しているという訳です。



ここからは私的な見解ですが。

3月4日の「サンシンの日」や、5月8日の「ゴーヤーの日」など沖縄の特産品等にちなんだ記念日はたくさんありますが。
10月17日の「沖縄そばの日」が、ほかと比べても沖縄県民にとってスペシャルな日になっているのは理由があるんだと思うんです。

沖縄そばが、沖縄県民に最も愛されている食べ物であることはもちろん。


地域に根付いた「沖縄そば」という名称が否定されそうになった時、なんとかそれを覆したというエピソードが、沖縄県民の心を揺さぶるからではないでしょうか。



琉球王国時代から、他国からの干渉や、争いに翻弄されてきた小さな島。

そんな歴史があるからこそ、自分たちの文化を守ったという「沖縄そばの日」のエピソードが一つの誇りになっているんだと思うんです。



1995年に発刊された名著『私の好きなすばやー物語』では、冒頭で「沖縄そばは、まさにうちなーんちゅのアイデンティティーの一部を形成している麺類なのです!」との一文がありますが、「沖縄そば」の日になると、この文章を思い出します。

沖縄そばは、まさに、うちなーんちゅ(沖縄人)のアイデンティティーなんじゃないかな。



f:id:sanpei808:20211017093916j:plain沖縄そば好きのバイブル。1995年発刊『私の好きなすばやー物語』>




ちなみに、沖縄そばの危機を救った当時の沖縄県生麺協同組合の理事長は、土肥健一氏でサン食品の創業者です。

土肥氏は、1934年熊本県生まれで、大学卒業後日本水工(株)に入社、1965年琉球政府の依頼で水質調査のため来沖し、1968年にサン食品を創業されています。

公正取引委員会などとの折衝は、大変な苦労があったそうで、記録を読むと土肥氏の働きが凄く大きかったことが分かります。

個人的には、沖縄そば(沖縄のアイデンティティ)の危機を救ったのが、他府県出身の土肥氏であったことも、胸が熱い思いになります。



沖縄そばは、長い交流の歴史、工夫しオリジナルな食べ物へと変化させた地元の料理人、そばを愛した地域の人々、そして県外の方々の応援も含めて、成り立っているんですね。

そんな沖縄そばの歴史へ思いをはせながら、今日は、沖縄そばを食べてみてはいかがでしょうか。

自分は、どこに食べに行こうかなー。



<参考になるサイト>

www.archives.pref.okinawa.jp

oki-soba.jp

 



<以前書いた沖縄そばに関する論争の記事、話のネタとして、是非「沖縄そば」の日に読んでみてください。>

okinawasoba.hatenablog.com

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